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80歳までに20本の歯を残すことが健康寿命を延ばす

高齢者の残存歯数は年々増加傾向にあり、80歳で平均して14本の歯が残存しています。厚生労働省や日本歯科医師会が推進している80歳で20本の歯を残そうとする「8020運動」の達成率は2015年では35%です。(日本医療・健康情報研究所による)
80歳までに20本の歯を残すことが健康寿命を延ばすという考えには、多くの研究やエビデンスがあります。以下に、具体的な研究データやその意義をより詳細に説明します。

1. 歯の本数と健康寿命の関連性
研究背景:
日本では、「8020運動」というキャンペーンがあり、80歳までに20本の自分の歯を残すことを目指しています。この運動は、口腔の健康が全体的な健康にどれほど重要であるかを示す取り組みの一環です。
具体的なデータ:
日本歯科医師会の調査によれば、80歳時点で20本以上の歯を残している高齢者は、歯が少ない人と比べて、約2倍以上の割合で健康寿命が延びることが示されています。
世界的にも、歯の本数と健康状態との相関関係が確認されています。例えば、アメリカの研究では、健康な歯が多いほど高齢者の生活満足度が高いことが明らかになっています。

2. 歯周病と全身疾患の関連
歯周病の影響:
歯周病は、口腔内の細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯周病が進行すると、歯の喪失だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが多くの研究で確認されています。
心血管疾患との関係:
複数の研究が、歯周病患者は心血管疾患のリスクが高いことを示しています。たとえば、あるメタアナリシス(複数の研究を統合した分析)では、歯周病と冠動脈疾患の関連性が確認されており、炎症が心血管系に及ぼす影響が考慮されています。
糖尿病との関連:
糖尿病患者は歯周病のリスクが高く、逆に歯周病が糖尿病の管理を難しくすることが知られています。炎症がインスリン抵抗性を高めるため、両者は密接に関連しています。

3. QOL(生活の質)の向上
心理的健康への影響:
健康な歯は、社会的な活動や食事の楽しみを支えます。食べ物をしっかり噛むことで満腹感が得られ、栄養摂取が促進されます。また、歯が健康であることは、自己肯定感を高め、社会的な交流を促進します。
具体的な調査結果:
日本の調査では、歯の本数が多い高齢者は、自分の健康状態に対する満足度が高く、日常生活の質が向上することが示されています。特に、食事や社交活動における楽しさが大きく影響します。

4. 認知機能との関係
認知症リスク:
歯を失うことが認知症のリスクを高めることが複数の研究で示されています。歯が1本失われるごとに認知症のリスクが約1.5倍に増加するという研究もあります。これには、咀嚼機能が低下することが関与していると考えられています。
脳の健康:
歯の健康は脳の健康とも関連していることが示されています。咀嚼することで脳が刺激され、神経細胞の活性化を促進します。これにより、認知機能の低下を防ぐ効果があるとされています。

5. 経済的側面
コストとケア:
歯を失うことで、入れ歯やインプラント治療が必要になり、数十万円から数百万円の経済的負担がかかることがあります。定期的な歯科受診や予防的ケアは、これらの高額な治療を避けるための有効な手段です。

結論
80歳までに20本の歯を残すことは、栄養状態、全身の健康、生活の質、認知機能、経済的負担など多くの面で健康寿命を延ばす要因となります。これらのエビデンスは、口腔の健康が全体的な健康にどれほど重要であるかを強く示しており、定期的な口腔ケアが不可欠であることを訴えています。

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Saori Ichinohe

一戸 小織

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ナビゲーター 一戸 小織

院長 一戸小織がお届けする日々の徒然。
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